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Writer's picture原空間工作所

水の話-1・・・東京の水

東京外環道路の問題についての報道から東京の水について考えていました。


2010年6月17日の記事より

今回問題になっている場所は、

関越自動車道(練馬区・大泉JCT)から中央自動車道(三鷹市・仮称中央JCT)を経て、 東名高速道路(世田谷区・仮称東名JCT)に至る区間。排気ガスによる環境悪化を心配する周辺住民の反対運動が根強かったため、1970年に計画が凍結されていた区間だ。 しかし、2003年に、当初の高架構造から、大深度地下(地下40m)を通す計画に変更する方針で計画が再開された。

私は道路を建設することによる環境の悪化というものを一概に「悪だ!」と考えるタイプではないのだが、今回の計画については大きな問題があり、東京を大きく衰退させてしまう原因になりかねないと思っている。

■東京の断面

武蔵野は、砂・微砂・粘土が少しずつ混じったローム層。 雨水は地中に浸透して、台地の端など地形の勾配が変わるところで、地下水が一挙に湧出して、池や沼を作る。井の頭池、三宝寺池、善福寺池は、「武蔵野三大湧水地」 と言われ、 武蔵野を南北に走る50メートルの等高線、すなわち武蔵野台地の東端に大量の地下水が湧出して出来たものだ。


■歌川広重 名所雪月花、井の頭の池弁財天の社雪の景

問題の大深度地下道路は、この武蔵野三大遊水地を貫く形で計画されている。

神田川は井の頭池を源流としていることは有名だが、御殿山遺跡からは縄文時代の竪穴式住居遺跡も出土していることからも、豊富な水があった事が伺われる。

三宝寺池は、国の天然記念物に指定された沼沢植物群落を有する池だ。 そして、善福寺池は善福寺川の水源にもなっている他。 現在も東京都水道局杉並浄水所の水源になっている。

しかし、これらの池は周辺の住宅などの開発や、雨水の浸透不足で全て渇水しており、 地下水脈からポンプアップして、池を維持している状況である。

武蔵野三大湧水地を貫くこの計画は、残り少なくなった地下50mにある「天然貯水タンク」に穴を開ける計画なのだ。

江戸はその昔、水の都であった。 事実、深川だけにかぎれば、ベニスをしのぐ水上都市だったともいわれている。

■歌川広重 深川万年橋下

江戸府内や近隣諸国との輸送手段の主力も、河川や堀割を利用した船によるものであった。 江戸は古くから水運にめぐまれていた地域だったが、江戸の多くの河川は、人の手によって創られた水路か、 元々あった河川を人工的に改造したものなのである。

なぜなら、江戸は元々、大部分が湿地帯であり、それを埋め立てて作られた都市で、 井戸を掘っても海水が混じり、良水を得るのが困難であったことから、 江戸府内に給水するため、神田上水と玉川上水が建設された。 そして、更に明暦の大火の後、江戸市中の拡大によって、 本所上水と玉川上水の分水の青山上水・三田上水・千川上水が加えられ、 六上水として整備されていた。 (その中で、江戸時代を通じて使用されたのは神田上水と玉川上水の両上水だけだった。) 100万人の都市「江戸」は、武蔵野台地の清らかな水に守られ発展してきた。

遥か昔より、「清らかな水脈は良い竜脈に通じる」と言われ、 水は生物にとって最も重要なものであった。 豊かな水脈を持つ場所は、豊かな自然の恩恵を受け、発展していく。 幕府亡き後、京都から東京に都も遷都されたことを見ても明らかだ。

近年、東京周辺では、頻繁な集中豪雨の発生、熱帯夜の増加、 冬日の減少等の原因とされるヒートアイランド現象など、 都市の熱環境が大きな問題となっている。

水や緑は、ヒートアイランド対策として、省エネルギーにつながり、 また緑の二酸化炭素吸収効果により、温暖化対策となる事は周知のことである。

この豊かな緑は水によってもたらされることを忘れてはいけない。

東京の風は、 日中は海面よりも地面の温度が高くなり、地面で熱せられた空気は上昇することで、 下層(地上500~600m)では、海上の冷たい空気が陸上へと流れ込み「海風」、 その上空(地上2km まで)は、陸上の暖かい空気が海上へと流れ出すという 海陸風循環によって生まれる。 日没後は逆に地面の温度が下がるため、下層では陸から海に向かって陸風が吹く。 海陸風の風速は2~5m/s であるが、一般に海風の方が陸風よりも強い。


■風の図

しかし、水を失った最近の東京では、 夜間になっても地表面の温度が高いため、 気象条件によっては日没後も海風(南風)が続く日がある。

また、東京都が水源としている利根川の渇水は3年に1回起きているという。

それを補うべく、新たなダムを地方に作り、東京に水を供給するという政策が、 当たり前のように成されているが、それでいいのだろうか。 私は 21世紀に相応しい豊かな都市とは、都市自身が再生機能を持った 自活する都市でなければならないと考えている。

それでなくても、破壊されてしまったものを取り返すのは大変なことである。 人間はもう一度、江戸の昔に戻って、 都市のマスタープランを見直さなければならない時に来ているのではないだろうか。



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